狂気的な一冊をお探しの方は居ませんか?村田沙耶香著「コンビニ人間」の読感

 

 

今回ご紹介するのはこちら。

 

村田沙耶香著「コンビニ人間

 

◯本情報

初出は「文學会」より2016年6月号にて、単行本では2016年7月文藝春秋刊とあります。

内容(文庫)は本文が155ページと解説が7ページと読みやすい文量でした。

系統でいうとお仕事系や特殊でありますが恋愛系の要素も含まれる、といったところでしょうか。第155回芥川龍之介賞受賞作品。

 

それではネタバレしない程度に内容に触れていきます。

◯基本情報

主人公: 古倉恵子

年齢 :36歳

性別 :女性

職業 : コンビニバイト

舞台 : 日色町(架空の場所?)

 

・背表紙の触書

「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて……。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。解説・中村文則

触書にある通り白羽がやってきてから物語がスタートします。その白羽と出会って以降、このままでは私も…と今後のことを考えはじめ、良くも悪くも白羽によっていくつかの変化が訪れます。読み終えてみれば、起承転結ははっきりしてとっつきやすかったなと思います。

 

◯本書の成分

独断と偏見による本書の成分はこちらです。

 

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成分_コンビニ人間

―読後の感想―

 

◯淡泊ですらすら

全体としては主人公の気質そのまま表現している無機質で淡々としている文だったので、すらすら読めました。多少不快になるようなドロッとした感じの場面が結構あったので、すがすがしい気持ちでは読めないかもしれません。そんな場面でも淡々と過ぎてしまうので不思議でしたが。そんな主人公・古倉ですが、無機質で淡泊と、と表現しましたが機械的な人物と表現した方が伝わるかもしれません。内側から出てくる感情の起伏のなさや物事に執着しない様子など、なんだか古い映画ででできそうなアンドロイドみたいです。読んでみると、小さいときから意識的にやっていたことが板について、それが自分自身になってしまったみたいですが。

 

◯継ぎ接ぎでできた個人

主人公の古倉がコンビニで働いてからやるようになったキャラづくりが面白く、それ自体もそうですが、自分は周囲の要素を継ぎ接いでできているという考え方も面白いと思いました。実際、確かに自分も周囲の要素少しずつもらってできているかもしれないなと思います。肉体以外のアイデンティティに関わる部分で完全にオリジナルと主張できるのは私も決して多くはないでしょうから、考えてみると少し気持ち悪くなりますね。

 

◯共感できること=同じ場所にいられること

主人公はあちら側とこちら側について考えるシーンがいくつかありますが、その条件として共感できるかどうかが肝だったのかなと思いました。自分の知っている知識や感情、物が相手と共有されて初めて、同じ生き物だと認識されるのだと古倉は感じていたのかもしれません。周囲の人たちが古倉もこちら側と分かった瞬間の手のひらを反すような反応には正直ぞっとしました。

 



一般的や当たり前、常識と呼ばれるものは常に変化しそのボーダーが上下にずれるのに合わせて、僕らは知らず知らずのうちにその線に自分を調整しているのかもしれません。それが社会に溶け込むと言うことなのでしょうかね。

切れ味がすさまじい作品に出合った気がしています。読んだ後にざらっとした何かが残る感覚、多少の恐怖感もあって存分に楽しめました。村田さんの他の作品もぜひ読んでみようと思います。

 

興味を持っていただけたら幸いです。

是非ご一読を!

 

しばらく。でした。

 

 

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