あなたの勇気の量は、どのくらいですか?伊坂幸太郎著「PK」の読感

 

 

今回ご紹介するのはこちら。

 

伊坂幸太郎著 「PK」

 

 

 

◯本情報

発売は2012年3月で、内容は244ページ、あとがきは3ページ、解説12ページ、PK、超人、密使の三編で構成されています。強いて分類してみるならSF群像劇系になりそうですね。

 

 

◯基本情報

それぞれのパートについて主人公(語り手)の基本的な情報をまとめていきます。

PK

・A(2000年頃) 小津 男性 サッカー選手

・B(1960年頃) 親父(Cの大臣の) 男性 作家

・C(2010年頃) 大臣 男性 大臣

・D(Aの半年後) 男女

 

 超人

・田中 男性 仕事不明

・大臣の秘書官

・審判

・幼少期の本田

 

密使

・僕 大学生

・私 仕事不明

 

あらすじ

「人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。」

 

◯本書の成分

独断と偏見による本書の成分はこちらです。

f:id:shibarakumaru:20190807113259p:plain

成分_PK

 

ー読後の感想ー

◯読み戻りたくなるつながりの多さ

とにかく読みごたえがありました。

ページ数は多くはないものの、時代的な前後関係や事実関係を確認するのに何度も読み戻りました。

また、各パートを超えて様々な関連がみられるので

「これどこか出てきてなかったっけ?」

となるのが多かったですね。

私はその作業が苦にはならず、むしろ楽しかったのですが、すらすら読みたい人にとっては多少不向きかもしれませんね。

 

◯謎の勢力と勇気の量

PKでは様々な人間が登場しますが、それぞれに「何か大きな力に流されそうになる」という構図が見られます。自分たちの意思を曲げようとする謎の力(勢力)が存在していて、何かしらの形で本意とは違う結果を作ろうとしているわけです。

それに関連して、過去を振り返っていた大臣の一言がとても印象に残っています。「試されていたのかもしれない。(中略)~例えば、勇気の量を」

 

◯勇気=超能力?

題名のPKはサッカーのペナルティキックだけでなく、Dでも出てきているように念力(この場合では超能力という方がふさわしいのでしょうか)にもかかっているようですが、勇気もある種の超能力みたいなものだなと思いました。突然襲い掛かる危機に行動できる(反応できる)人とできない人がいて、その2タイプを分けるのは勇気があるかどうかだったりしますよね。危機に限らず、新しい環境に飛び込んだり、今までしなかったようなことをやってみたりすることにも通ずるところはあると思います。具体的に言えば、異性にアプローチするのが一般的に共感を得られるのではないでしょうか。一言声をかけてみる、そんなたった一歩を踏み出すのにどのくらいの勇気が必要なのでしょうか。

 

◯一番の謎は秘書官

本書の中でも特に秘書官が魅力的に思えました。解説でも述べられている通り、「割り切れない倒れ方」のようなポジションにいるように思えます。PKでは大臣から頼まれた調査で誰も知らない情報を得ていること、またPKの最後の大臣とのやりとりからもその異質さがつたわるかと思います。さらに言えば超人にて、最後を締めくくっているのは、秘書官ではないのだろうかと個人的に予想していたりします。

 

◯もう一度読みたくなる感覚

いろんなことが明らかになっていないおかげで様々な予想が立てられるのは、本書の楽しみ方をさらに広げていると思います。

また伊坂幸太郎作品特有の含蓄あるセリフも満載でした。その部分も読みどころの一つでしょう。

 全て読み終えて全体見ると何となく語られている物語でなにか大きな物語が進行しているのではないかと感じました。所々でそんな雰囲気があるんですよね。

 

 是非ご一読を!

 

しばらく。でした。

 

 

しばらく。はぶろぐ村に参加しております!

下のバナーをクリックすると、本日のモチベーションががっつり上がります!

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村