あなたの愛猫はしゃべりますか?西加奈子著 「きりこについて」の読感
今回ご紹介するのはこちら。
西加奈子著 「きりこについて」
◯本情報
初刊行は2009年4月とあります。内容(文庫)は204ページと解説が7ページという構成です。系統でいうと特殊系人生譚とでもいうのでしょうか。分量的にはするりと読めるぐらいかと思います。
◯基本情報
主人公:きりこ
年齢 :生後から24歳ぐらいまでの期間
性別 :女性
職業 :学生→不登校→アダルトビデオ制作会社副社長
舞台 :架空
あらすじ
小学校の体育館裏で、きりこが見つけた黒猫ラムセス2世はとても賢くて、大きくなるにつれ人の言葉を覚えていった。両親の愛情を浴びて育ったきりこだったけれど、5年生の時、好きな男の子に「ぶす」と言われ、強いショックを受ける。悩んで引きこもる日々。やがて、きりこはラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。きりこが見つけた世の中でいちばん大切なこととは?
◯本書の成分
独断と偏見による本書の成分はこんな感じです。
―読後の感想―
〇ポップな見た目とディープな話題
文庫の表紙、「きりこについて」というタイトルとそのかわいらしいフォント。本書をとても気軽に手に取ってしまいましたが、その内容はかなり考えさせられるものでした。まず、
「きりこはぶすである。」で始まり、前半はきりこが生まれてから、いかに周りにかわいがられたか、中心であったかについて語られていて、ファンシーな印象を受けました。しかし、好きな男の子に「ぶす」と言われたシーンから物語は一変し、読者に投げかけているテーマは普遍的で重く、強いメッセージ性があると思いました。主人公の容姿が醜い設定は思い当たるものが多からずありますが、その中でも、本書の主人公の容姿などに対する解釈や主人公のもつ純粋さは特徴的だなと思います。
◯黒猫ラムセス2世、しゃべる。
あと、本書の魅力はなんといっても黒猫のラムセス2世です。しゃべるんですよ。かわいい。実際には、きりこが猫と会話できるっていうだけですが、誰しも一度は飼い猫(もしくはその他の動物)がしゃべったら何言うんだろうと考えたりしますよね。そしてまた、ラムセス2世は猫独自の観点で物事を解釈しているので、そこも愛らしいですね。猫好きにはお勧めです。
◯社会性と猫の本能
きりこが住んでいる団地の住民たちも個性豊かです。きりこが自身の容姿に対する世間の認識とのずれに思い悩むと同様に、住民たちそれぞれが社会とのずれにもがいている構図が伺えました。
誰にも教わらないのに私たちの中にはいつからかもわっとした“普通”があると思います。そして、そこからはみ出すことへの恐怖心や抵抗感を少なからず持っているとも思います。だからこそ、自分らしさと貫く主人公たちがうらやましく思えました。本書では常に自分らしくあることを問い続けているような気がします。印象に残っている一文があります。
人間より、猫のほうがいいに決まってる。
何にも左右されず、本能のまま生きる猫。私たちはもっと猫を見習うべきなのかもしれません。
興味を持っていただけたら幸いです。
是非ご一読を!
しばらく。でした。
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